そもそもクリーンルームとは?
「クリーンルーム」と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか?「クリーン」と付くのだから、病院などで使われていそう・食品などの衛生面が重要な工場で、白い服を着た人が働いている場所、というイメージを思い浮かべる方もいらっしゃると思います。しかし、イメージはあっても実際どのような使い方をするのか、そもそも何がクリーンなのかという細かな部分までは把握しきれていない場合もあるかもしれません。
「クリーンルーム虎の巻」の記事では、「クリーンルーム」とはそもそも何なのかという基本的な情報をまとめております。クリーンルームを新たに導入する事をご検討されておられる方々の一助となれば幸いです。この第1回では、クリーンルームの定義、仕組みについてご説明いたします。
クリーンルームの定義
では、まずクリーンルームとはどういった物の事を指すのでしょうか?これはJIS規格(日本工業規格、Japanese Industrial Standardsの略)によって定義されています。主な条件としては
- コンタミネーションコントロールが行われている限られた空間
- 空気中における浮遊微粒子、浮遊微粒子が限定された清浄度レベル以下に管理
- その空間に供給される材料、薬品、水などについても要求される清浄度が保持されている
- 必要に応じて、温度、湿度、圧力などの環境条件についても管理が行われている空間
これらが挙げられます。コンタミネーションコントロールとは、製品にほこりなどの異物の付着や混入(コンタミネーション、以下コンタミ)がないように管理を行うことを指します。そして、この条件の中であまり聞きなれない単語として登場するのが「清浄度」というものです。
清浄度(クリーン度とは)
清浄度とは、先程ご説明したほこりなどのコンタミがどれだけ少ないかを示す度合いのことを指します。ちなみにクリーンルームを提供するメーカー等は、「クリーンクラス」「クリーン度」と一般的に、よりイメージしやすい表現を使っていますが、すべて同義語です。本コラムでは以下「クリーン度」と記述します。
クリーン度はアメリカで米国連邦規格として制定されたのが始まりです。この規格では0.5μmの粒子を基準とした、1立方フィート(約33㎝角)中の粒子数を規定しており、1立方フィート中に0.5μmの粒子が1000個以下であればクラス1000、100個以内であればクラス100というように分類されていました。
現在は国際規格であるISOでの規定が基準となっており、1㎥中の0.1μm以上の粒子の数によってクラス1~9まで分類されています。しかし日本では、依然として慣習的に使われてきた、米国連邦規格での表記が目立つため、以下の表では2通りのクラスを記載しています。(基準はISOに乗っ取り立法メートルとしています。)
(スマートフォン等は、表を横にスワイプすることで全体をご覧いただけます。)
クリーン度(クラス) | 上限濃度(個/立方メートル) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
ISO規格 | 米国連邦規格 | 測定粒径 | |||||
0.1μm | 0.2μm | 0.3μm | 0.5μm | 1.0μm | 5.0μm | ||
Class1 | 10 | 2 | |||||
Class2 | 100 | 24 | 10 | 4 | |||
Class3 | Class1 | 1,000 | 237 | 102 | 35 | 8 | |
Class4 | Class10 | 10,000 | 2,370 | 1,020 | 352 | 83 | |
Class5 | Class100 | 100,000 | 23,700 | 10,200 | 3,520 | 832 | 29 |
Class6 | Class1,000 | 1,000,000 | 237,000 | 102,000 | 35,200 | 8,320 | 293 |
Class7 | Class10,000 | 352,000 | 83,200 | 2,930 | |||
Class8 | Class100,000 | 3,520,000 | 832,000 | 29,300 | |||
Class9 | 35,200,000 | 8,320,000 | 293,000 |
ここで必要とされる産業分野とクリーン度の一例を挙げると
- クラス1-3:半導体工場
- クラス4-5:食品、薬品、精密機器、電子部品、光学機械などの工場
- クラス6-9:印刷、自動車の部品製造、病院の治療室・手術室等
のように、分類することができます。
クリーンルームの基本的な構造
では、クリーンルームはどのような構造で清浄な空間を保っているのでしょうか?今回はE-Room+の基本的な構造を一例としてご紹介いたします。
クリーンルームにおいて重要な点は先述した通り、コンタミを防ぐことです。そのため、外部から空気をクリーンルーム内に取り付けられた、HEPAフィルター(高性能フィルター)を通して取り込み、微粒子の侵入を防ぎます。
フィルタを通して取り込まれた空気は、壁などに開けた隙間や、パンチングパネルの隙間より外に出ていきます。ルーム内は「陽圧」という、ルーム内から外へ空気が流れるような仕組みで設計されているので、隙間から外気が入ってくることはありません。
他には、床全体を隙間のある仕様(グレーチング床)にして天井から一方向に押し出す仕組みや、HEPAフィルタを壁一面に配置して、反対側の壁の隙間へ押し出す仕組みなど、様々な仕様が存在しています。
クリーンルームを設置する際はクリーン度の高さに比例して、要求される設備の機能・コストも共に高くなっていくため、目的に合ったクリーン度がどれぐらいであるか、あらかじめ調べておくことが大切です。